ミュージカルに必要なのは3つの力
ミュージカルは、歌って踊って、セリフと全身でストーリーを表現していくものです。さまざまな要素が含まれているのが、ミュージカルの醍醐味であり、楽しさでもあります。ただし、出演する側に回ると、逆にこれだけのことを一度にしなければならないので、非常に大変です。つまり、ミュージカルに出演するためには、演技力と歌唱力がまず必要で、さらにダンス力も求められるということになります。
ミュージカルでは、セリフは歌の形で表現します。ただ言うだけでも非常に難しいものですが、さらに歌にしなければならないわけですから、難しさは倍増します。また、舞台の上でリアルタイムの演技で観客を魅了する必要があり、演劇独特の緊張感やプレッシャーがかかります。ミュージカル俳優にはそのための精神力が必要になります。
さらに、観客の目の前でその都度演じるものゆえに、映画やドラマのように撮り直しがききません。失敗したら成功するまでやり直すということができないので、一発で結果を出さなければならないという難しさがあります。常に本番という舞台で、毎回結果を出すためには、十分なスキルがあることが求められます。このような難しさがあるからこそ、見る側を魅了するのだといえるでしょう。
どういう形でミュージカルに出演するか
ミュージカルのオーディションには、2種類あります。1つは、ミュージカル公演をする劇団に所属するために行われるオーディションで、もう1つは、特定のミュージカルの特定の役を勝ち取るために行われるオーディションです。それぞれオーディションの内容が異なり、特定のミュージカルのオーディションの場合は、その役にもっともふさわしい人を選ぶために行われます。
劇団に所属すると、その劇団が主催するさまざまなミュージカルに出演するチャンスがあります。大手劇団は競争率も高いので、なかなか合格しにくいものの、所属できれば給料をもらいながらミュージカルに参加することが可能です。いわば劇団に就職するような形になり、一度入団オーディションに合格すれば、ミュージカルごとにオーディションを受ける必要はありません。これに対して、特定の劇団には所属せずに、フリーで活動するケースもあります。この場合は、都度好きなオーディションを選んで自己負担で受けなければなりません。オーディションに受かった後も、交通費その他を自己負担して出演しなければならないこともあり得ます。
服装で目立とうとするのはNG
オーディションを受ける場合に、気をつけてほしい点があります。それは、服装で目立とうとしないことです。たくさんの応募者がいる中から選んでもらうには、うまく自分をアピールすることは必要です。しかし、ミュージカルの演目を意識した衣装を着ることでアピールしようとするのは、かえってマイナスになりかねません。
オーディションで見られるのは、人そのものです。服装に個性があるかどうかは、審査の対象にはなりません。衣装はいくらでも作れますが、その人自身の個性は2つとないもので、そこをオーディションでは見ているのです。ですから、オーディションでは、自分という人間の魅力を最大限にアピールしましょう。演技や歌の審査があることを意識して、動きやすい服装を選ぶことも大事です。派手な服装にして、動きにくかったり歌いにくかったりしては、かえって自分をうまくアピールできなくなってしまいます。
オーディションでは、奇抜な服装をする必要は一切ありません。服装ばかり目立つと、自分に自信がないから外見でアピールしていると思われることもあるかもしれません。一般的な面接などと同様に、清潔感があって、自分によく似合う服装を選ぶのが一番です。
よく通る声はオーディションの武器
ミュージカルでは、舞台の上で観客に向かって豊かな表現をしなければなりません。そのため、オーディションでは声の質やボリューム、声の通り具合などがチェックされています。ですから、面接会場が舞台だというような気持ちで、きちんとした声で話すことが大事です。審査員の質問に答えるときも含め、常にはきはきとよく通る声で話すと好印象でしょう。話すときは相手の顔をしっかり見て、ゆっくり丁寧に話します。審査員に聞き取りやすい声できちんと答えられているか、常に確かめながら気持ちのよい会話を心がけましょう。
演技や歌の審査のときはもちろんですが、それ以外のときでも、聞き取りやすくはっきりとした話し方をすることが大事です。話し方のクセは自分ではわからないことも多いので、家族や仲間に客観的にチェックしてもらうのもよいでしょう。話すときは、背筋をしっかり伸ばすだけでも、声の通りが違います。また、話すときの表情も声の印象を左右するので、明るく元気な表情で話すのもポイントです。常によい姿勢で、明るくはっきり受け答えできるように、事前に練習をしておくことをすすめます。
ボイストレーニングはしておくべき
ミュージカル俳優を目指すのであれば、ボイストレーニングはぜひ受けておきたいものの1つです。ミュージカルでは、セリフと歌の両方を聞き取りやすいトーンで話さなければなりません。しかし、これはプロのレッスンを受けることなしには、なかなか身につけることができません。発声をよくするための腹式呼吸や喉を閉めない声の出し方を身につけておくためにも、ボイストレーニングは受けておいた方がよいです。
ボイストレーニングを行うと、喉に余計な負担をかけることなく大きくて通りのよい声が出せて、きれいで聞き取りやすい発声ができるようになります。レッスンは歌で行われるので、歌い方のレッスンにもなります。まさに、ミュージカル俳優を目指す人に必要なスキルが身につくので、ボイストレーニングは欠かせないものといえるでしょう。
即戦力が求められる
オーディションによっては、即戦力が求められる点も留意しておきましょう。劇団への入団オーディションの場合は、すぐにミュージカルに出演できる人材を採用するものではなく、育てる人材を選ぶという目的もあります。しかし、具体的な演目に出演するためのオーディションの場合は、育成目的で人を選ぶわけではありません。すぐにその役でミュージカルに出られるような即戦力を選ぶことになります。ですから、オーディションのハードルとしては、概ね高いものにならざるをえません。
そのため、演目に出演するためのオーディションを受ける場合は、事前対策をしっかり講じておくことが重要になります。募集されているミュージカルの内容をきちんと把握して、どのようなストーリーの中のどんな役なのか、まず頭に入れましょう。その上で、役に求められるスキルなどの分析をして、オーディションではどんな人が求められているのか、何ができれば他の人と差別化できるのかを自分なりに考えて、アピールポイントを工夫しておきます。そうすれば、きっと合格に近づけるでしょう。