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良質なコミュニケーションに必要な能力とは

2019.09.16 / 未分類

良質なコミュニケーションには2つの能力が必要

「コミュニケーション」という言葉は日常よく使いますね。でも、あらためてコミュニケーションとは何なのか?と考えてみると、今ひとつ曖昧ですね。

コミュニケーションという言葉を広辞苑で調べてみると、「社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達。言語・文字その他視覚・聴覚に訴える各種のものを媒介とする」と出てきます。

なんだか、ちょっと難しい表現ですね。
これを心理学的な視点からもう少しかみ砕いて言いますと、良質なコミュニケーションのために必要な能力とは、大きくは2つあります。
一つ目は「共感して聞く能力」。
そして二つ目は「率直に伝える能力」です。
この2つの能力をバランスよく備えていれば、まずます良好なコミュニケーションが取れると思われます。

なぜコミュニケーションエラーが生じるのか

そもそも対人コミュニケーションとは、相手がいて初めて成り立つものです。その相手をぞんざいに扱うような、または無視するような態度で接していたら良好な関係を築けません。ひとくちにコミュニケーションと言っても「良くないコミュニケーション」も当然あるわけです。コミュニケーションエラーと言い換えてもいいでしょう。

皆さんも経験があると思いますが、なにかイライラしてしまう、腹が立つ、腑に落ちない、心の中にわだかまりが残る、なにか心にひっかかる――などというのはコミュニケーションエラーの結果と言えるでしょう。もっと言うと、一方または双方が相手に共感していない場合、こうした結果になりがちです。
良質なコミュニケーションのためには、まず相手の気もちになって考える、共感しながら話を聞くという能力が必要になってきます。

でも、よほど性格の曲がった人だったり、あるいはよほど嫌いな相手に対してでない限り、相手に共感しない態度を意図的にわざわざ取る人は少ないと思われます。
では、なぜコミュニケーションエラーが生じるのでしょうか。

人間は無視されることを無意識に恐れる

私たち人間はそもそも「相手から存在を認めて欲しい」という潜在的な欲求を持っています。言い換えると、存在を認められずに無視される、あたかもいないような扱いを受けることを恐れているのですね。そのため、無視されるくらいなら…と、相手を怒らせるような攻撃的な態度を取って注目を得ようとするわけです。
この無意識のクセに本人は気づいていないことが多いため、コミュニケーションエラーが生じ、結果として周囲から浮いたり疎外されたりしていくわけですね。

このように、自分が相手に求めるものと、相手の態度・行動にギャップが生じると、コミュニケーションエラーにつながりやすくなります。

一例を挙げると、小さな子どもがお母さんの愛情や注目を得たいと思っても、それがなかなか難しい場合、わざわざお母さんを怒らせるようないたずらをしたり、悪いことをして自分に注意を向けようとしたりします。無視されるくらいなら、マイナスの評価でもいいから得たいという無意識的な行動です。

人間は本当に十人十色です。自分と同じ価値観の人ばかりではなく、様々なクセや傾向を持っており、それに正解・不正解はありません。
特に職場などでは、嫌いだからといってコミュニケーションを放棄するわけにもいきません。そうした様々な人たちと良質なコミュニケーションを実践していくうえで、相手を尊重して共感しながら話を聞くという態度がいかに大切なことかお分かりいただけると思います。

ことさらに「相手の立場になって聞こう!」と難しく考えずに、例えばなにか作業をやっている時に話しかけられたとしたら、いったん作業の手を止めて、きちんと相手のために時間を取って、相手の顔を見ながら聞くといった心がけを持っていただくと良いでしょう。あなたのその行動、態度、さらには表情などによって、相手の人は(自分は無視されていない、ぞんざいに扱われていない)と感じ取るわけです。

ただし、これができていない人は意外に多いです。
例えば、職場で部下が(指示された)書類のコピーを持ってきたのに、目も合わせずに「ああ、そこに置いといて」…などと言うのはその典型です。

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「率直に伝える能力」とはどういうことか?

良質なコミュニケーションのためにもう一つ必要なのが、自分の感情や意思を「率直に伝える能力」です。
簡単なように思えるかもしれませんが、上手な伝え方ができていない人は意外に多いです。
感情の伝え方は、①攻撃的、②非主張的、③率直――の3つに分類できます。
以下に解説していきます。

①攻撃的な伝え方

攻撃的な伝え方とは、自分の意思や感情をはっきり伝えることで、相手の気もちや言い分を無視し、軽視し、結果的に自分の主張を押し付けるような言動です。こういう人は一見するとはっきりとものを言っているように見えますが、要は自分のことだけを主張しているわけです。そこからは、その場の主導権を握りたい、相手より上に立ちたい…といった姿勢が透けて見えます。強引に主張するため、ぎすぎすした関係になりやすく、相手からすると後味の悪さが残ります。

②非主張的な伝え方

非主張的な伝え方とは、自分の意思や感情を明確に伝えなかったり、もしくは(伝えたいと思いつつ)伝えられない場合です。どっちつかずの態度も、非主張的といえます。
相手の意見に対して反対なのにもかかわらず、それを言えずに曖昧な態度をとって、結果的に相手に迎合してしまう…といった場合などですね。

この行動の背景には、自分に自信がない、不安な気もちが強い、さらにはそうした気もちを隠している自分自身に対して卑屈な気もちがあったりします。
相手に意思を伝えていないわけですから、相手が分かってくれるはずもないのですが、(あの人は人の気もちを分かってくれない、鈍感だ)などという、相手に対する悪感情を持ったりします。

さらにこのタイプに多いのは、(また言えなかった…)という自己否定的な気もちをあとに引きずり、その感情が自分を責めたり罰したりすることで処理されるケースです。これが無意識のクセになってしまうと、常に自分を責めているような状態となり、人間関係がとても窮屈なものになり、自己否定感も増してしまいます。

③率直な伝え方

率直な伝え方とは、相手の気もちに配慮し、同様に自分の気もちも大切にして、言うべきことは言い、仮に相手とは意見が合わない場合も、お互いに譲歩しながら妥協点を見つけていけるような感じです。
相手の気もちに配慮しているので、攻撃的で一方的な押し付けがましい言い方にはなりません。また自分の気もちも大切にするので、へんに卑屈になったり相手に迎合しない態度です。
この伝え方を、皆さんにはぜひ実践していただきたいと思います。
この伝え方は、良質なコミュニケーションを実践するうえでとても重要です。
そこには、「主張しなければ、自分の気もちは相手には伝わらない」という前提があります。

とかく日本社会では、明確に言葉で伝えていないにもかかわらず(このぐらい分かってくれるはずだ)ということを期待する、あるいは逆に言われなくても相手に先回りして配慮する「察する」という慣習がありますね。これは時と場合によってはとてもエレガントなのですが、仕事の場などではコミュニケーションエラーが生まれやすいかもしれません。
(上司だからこれぐらいは分かってくれているだろう…)
(部下なんだから、いちいち言わなくてもこのくらいの配慮は当然だ)
…こうした曖昧さ、相手に対する過剰な甘えは、コミュニケーションエラーが生じた時に、お互いが相手を責め、自己弁護をするようなことになりかねません。

相手を傷つけないように、しかしながらきちんと自分の主張をする、そのうえで意見が合わない時はお互いに譲歩して気もちよく落としどころを見つけていくような率直な関係性が築ければ、その相手の人とはおそらく今後も良好な関係でいられるでしょう。

2つの能力がかみ合ってアップするコミュニケーション能力

ここまで、良質なコミュニケーションをおこなううえでの2つの能力、すなわち「共感して聞く能力」と「率直に伝える能力」について述べてきました。
これはどちらか一方だけ持っていてもダメで、両方をバランスよく持っていることがポイントになります。
そして、大切なことは、コミュニケーションのクセ・傾向は心がけと練習次第で変えていけるということです。「これは性格だから変えられない、直らない」というものではありません。
もし万一、自分のコミュニケーション能力はちょっと低いなあ…とお感じの方は、ここでご紹介した2つの能力を持っているか、なおかつ実践しているかどうかを振り返ってみてください。

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