ヒップホップダンス=ストリート生まれのダンス
今では学校の授業に組み込まれるほどのヒップホップダンス。テレビや舞台ではもちろん、公園や建物の窓ガラスに姿を映してダンスを練習する若者たちを見かけることも珍しくありません。市民センターなどのカルチャー教室では、シニアの方々向けのヒップホップダンス教室があったり、フィットネスクラブでは、すでに幼児向けのクラスが設けられていたりします。
そんな老若男女に、あっという間に広まったようなヒップホップダンスですが、実はストリートダンスと呼ばれるジャンルの一つなのです。
それはその名の通り、ニューヨークの下町の若者たちが街中(ストリート)で、ブラックミュージックに合わせて踊り始めたのがきっかけとされています。室内で規則正しく優雅に踊るバレエやジャズダンスとは違い、ストリート生まれだからこそ、形にとらわれず、感情のまま自由にダンスできるところがヒップホップダンスの本来の最大の魅力と言えます。
現在のヒップホップダンス
日本では1980年代後半に大流行し、その後は人気の低迷した時期もありましたが、学校教育に導入されたことで認知度も上がり、一気に人気も再燃しました。
現在では数多くのアーティストやダンサーも誕生し、人に見せるためのショーアップされたヒップホップダンスへと進化しています。さらにヒップホップダンスの他にも、フリースタイル、ブレイクダンス、ロックダンス、ポップダンス、ニュージャックスイング、クランプ、ガールズヒップホップなど、様々なジャンルに分かれて確立されています。
ダンスを始めるにあたっては、基礎的な部分はどれも同じなので、まずは代表的なヒップホップダンスがすべての入り口となります。
音楽もこれまでは、ブラックミュージックで踊ることが当たり前とされていましたが、現在はジャンルにとらわれず、Jポップやロック、アニメソングや演歌など、色んなジャンルの音楽で踊るようになりました。
日本のヒップホップダンスは最先端
海外で生まれたダンスだからこそ、やはり海外のレベルには到底およばないのでは?と思われがちですが、そんなことはありません。それはもう昔の話で、今や日本のヒップホップダンスは、世界の大きなコンテストで優勝するほどのレベルとなり、世界中から注目されています。個人のレベルが上がっているのも確かですが、特に多人数で踊るチームダンスでは、全員がシンクロした一糸乱れぬダンスで、海外のダンサーたちを圧倒しています。個々がきっちりと動きを合わす、その計算された正確で繊細なダンスは、ダイナミックな海外のダンサーたちには新鮮に感じるようで、チームワークのいい日本人の特性を活かした得意のスタイルとも言えるでしょう。
ヒップホップダンスはリズムが命!
ヒップホップダンスはそもそもが自由なダンスなので、特別に難しいルールがあるわけではありません。その代わりに、いかにリズムに乗れているか?身体でリズムを表現できているか?が最も重要になってきます。ヒップホップダンスでは、うまくリズムに乗れている状態、ノリの良い状態の雰囲気のことを「グルーヴ」と呼び、ダンスからこのグルーヴが出ているかどうかをとても重要視しています。このグルーヴが出始めたら、レベルアップできていると思っていいでしょう。
ヒップホップダンスには独特のリズムの取り方があって、1,2,3,4のビートの中で、1と3でリズムを取ることを「表打ち」、2と4でリズムを取ることを「裏打ち」と言います。ヒップホップダンスでは基本的に裏打ちをベースに踊ることが多いので、最初はこの裏打ちをひたすらマスターするところから始まっていきます。
どうやって練習するの?
まずは、流行しているダンスや自分の好きなアーティストなどのダンスをコピーして、とにかく音楽に合わせて動いてみることで、ダンスを楽しいと感じるのが一番です。
そして実際に踊る以外にも、できるだけたくさんの音楽を聴いて、リズム感や感受性を養ったり、たくさんのダンスを観て、踊り方やテクニックを吸収するのも良い方法と言えます。
ダンススクールや養成所での具体的な練習例として、未経験者や初心者向けの基礎的な練習では、第一にリズム取りがあります。簡単に説明すると、膝を曲げた状態から伸ばして立つ「アップ」や、膝を伸ばした状態から曲げて沈む「ダウン」という動き方を使って、裏打ち、表打ちのリズムを取ります。そこへさらに色々なステップを加えて、リズムに乗ることを覚えていきます。これが基礎中の基礎となります。
続けて、振付したものを踊ります。初級のうちは講師が考えた振付を踊りますが、レベルに応じて自分自身で振り付けることも覚えていきます。
振付通りにうまく踊れた時の快感と達成感は、どんどんダンスに夢中になってしまう魔法のようなものです。この体験を繰り返すことが、ダンスを長く続けていく秘訣でもあります。
ダンススクールや養成所でできること
最近はインターネットの動画なども充実しているので、一人でも、どこででも、容易にダンスの踊り方や振付のコピーを覚えたり、ちょっとしたレッスンまでも受けることができるようになりました。とはいえ、初心者の場合、それで一時的なダンスの楽しさに触れることはできても、その先の上達や継続へと繋がるには、やはり限界があるようです。
そこで、ダンススクールや養成所で学ぶべきかどうかという選択肢が出てきます。ダンススクールや養成所では、先ほどのリズム取りや振付に加えて、手足、首、肩、胸、腰などの身体の各パーツごとに動かすアイソレーションという練習、さらに必要であれば、腹筋や背筋、体幹を鍛えるための筋力トレーニングも行います。単純にダンスを踊るだけでなく、ダンスを踊れる身体を作るためのものです。それと同時に、昨今の児童の体力不足の解消も、かなりのダイエット効果も期待できます。
そして何より、講師や仲間、ライバルができることで上達の早さが著しく変わってきます。お互いに高い目標を持った仲間たちと踊る一体感は、学校の授業のダンスとはまた違う視野を広げてくれるでしょう。
その上、ダンススクールや養成所では、レッスンや発表会など、人前で踊る機会が多いため、元は内向的な性格だったけれど、社交的な性格になれたという、精神面での成長も見られることがあります。引っ込み思案や恥ずかしがり屋を卒業したいという人にもおすすめかもしれません。
ヒップホップダンスを踊るなら..
先に紹介したように、今や日本のヒップホップダンスは世界のトップレベルです。それは、日本でもヒップホップダンスに触れる環境が身近になってきたということもありますが、数あるダンススクールや養成所のそれぞれのレベルが高くなってきたということでもあります。
専門的にプロを目指す人にはもちろんですが、基礎からしっかり学びたい、少しでも早く上手になりたい、同じような夢を持つ仲間を見つけたいという人にとっても、ダンススクールや養成所で学ぶことは有効であり、一番の近道だと思います。
でも、じっくりと自分のペースで好きなように踊りたいという人も、それがその人のスタイルならば、それでいいのです。どんなスタイルであっても、とにかく続けていくことが大事になります。
いずれにせよ、必要なのは一番楽しめる自分のスタイルを見つけること。自分のスタイルで踊ることこそが、最高のヒップホップダンスなのですから。