番組収録中に、ADが映っているのを見かけたことはありませんか?
中には、司会者やゲストから直々に「ねぇ〇〇さん」と話を振られることも・・・。
番組制作だけではなく、芸能人との関わりも深い「AD」。
ADはいわば、番組制作の登竜門です。ADの仕事を経て、現在ディレクターやプロデューサーとして活躍する方は数知れません。
では、ADとはどのような仕事なのでしょうか? 仕事内容、給与事情、勤務時間、また採用に関することなどを幅広くご紹介します。
ADの仕事とは
ADは、正式には「アシスタントディレクター」。番組の企画や制作において、現場監督(ディレクター)のアシスタントを務める仕事です。
ADの仕事を一言で表現するなら、「なんでも屋」が適切でしょう。
出演者へのオファー、ロケ先の下調べ、ロケ弁当の手配、宿泊先の手配、通行人の誘導、番組の編集・・・など仕事内容は多岐にわたります。
業務量が多いので、満足に休憩や睡眠を取れない方は少なくありません。「もう〇日家に帰っていません・・・」と、テレビ局に宿泊するADも数多く見られます。時には休日も返上して働くこともあり、なかなかハードな仕事といえるでしょう。
しかし、プロデューサーやディレクターなど重役に就いている人は、一度はADを経験していることがほとんどです。業務内容が多い分、業界の事情に精通できるので、成長と共にどんどん広い視野を持てるようになるのです。
ディレクターの右腕として、雑務をこなすAD。慣れるまでは大変かもしれませんが、ディレクターのプロの仕事を最も間近で見られるため、「編集の技術や演出方法がとても勉強になる」と仕事をしながら知識をつけるADはたくさんいます。将来プロデューサーやディレクターを目指しているなら、まずはADとして幅広い知識を身につけましょう。
ADになるにはどうしたらいい?
番組制作に間近で関われて、芸能人との交流も持てるAD。
ADになるためには様々な方法がありますが、もし将来ディレクターとして働きたいなど夢を持っているなら、番組制作会社かテレビ局に就職しましょう。ただこの場合、「四年制大学卒業」以上の学歴が求められることがほとんどです。特に大手テレビ局ではこの傾向が強いので、もし学歴があまり高くないのであれば、テレビ局よりも番組制作会社を狙いましょう。
番組制作会社では、ADをアルバイトとして募集していることがよくあります。この場合、学歴不問のことがほとんどなので、大卒以外の方でも十分にチャンスはあるでしょう。
もし現在進路に迷っている若年層の方は、テレビ局への就職を目指すなら学歴があるに越したことはありません。四年制で難関の大学に入学すれば、それだけ枠に入れる可能性が上がるでしょう。また大学ではなくても、映像の専門学校などに入学するのも有効といわれています。放送に関する法律や技術など専門的な知識を身につけておけば、即戦力として重宝されることも期待できるでしょう。
ADの給与はどのくらい?
仕事は、私たちの生活を支えるもの。
いくらやりがいを見出していても、給与は気になるところでしょう。
ADの給与は、大手テレビ局、地方テレビ局、番組制作会社など勤務先で大きく異なります。
たとえば大手テレビ局では、実力のあるADなら年収1,000万円に到達する方もいますが、駆け出しの場合は年収250~600万円程度が相場のようです。
地方テレビ局の場合は、500万円前後が相場といわれています。
番組制作会社の場合は、テレビ局よりも年収が少ないことが多く、たとえばアルバイト採用だと月収18万円程度からスタートするケースが多いです。
ADの休みはいつ?
社会人としての理想は、「仕事はしっかりこなし、休日は家族や友人と遊ぶ」というON・OFFのメリハリがついた生活が一番です。
しかしADの仕事に、決まった休日はありません。
ディレクターから呼ばれれば、いつでも対応しなければなりません。そのため決まった休日を設けることは難しく、テレビ局で仮眠を取ってそのまま翌日の仕事へと繰り出すADも数多くいます。
つまりADには、効率的な作業や時間のやりくりが必須。
特に、女性など体力面が弱い方は激務のあまり体調を崩すことが少なくないので、普段から筋トレなどで体力をつけておくことをおすすめします。
ADはどのくらい芸能人と接点が持てる?
ADは、番組制作において裏方の役割ですが、中には芸能人と深い交流を持つ方もいます。
では、ADはどのように芸能人との接点をつくるのでしょうか?
ADは、テレビ局内の食堂で食事を摂ることができます。テレビ局の食堂を利用するのは芸能人も同じで、「食堂で昼食を摂っていたらたまたま隣のテーブルに芸能人が座った」など思わぬきっかけができることもあります。
実際、「ディレクターに昇格したいわけではないけれど、芸能人に会いたくて」とADになる方も多くいます。面接でそれをストレートに言うわけにはいきませんが、これも立派な志望動機といえるでしょう。
ADは番組のキャスティングを任せられることもあるので、好きな芸能人がいたらキャスティング案を提出・・・ということもできます。特定の芸能人だけをひいきするわけにはいきませんが、あこがれの芸能人を間近で見られるのはADのメリットの一つですね。
ADになるなら、「テレビが好き」が大前提
ADは、番組の企画から収録、編集まですべてに関わります。
収録を開始するまでに、「どこで撮影するのか(ロケーション)」「どのような番組にするのか(方向性)」「どうすれば面白くなるか(立案)」などすべてを突き詰めて考えていきます。
この事前作業だけで、すでに何時間も時間が必要です。
いざ収録を迎えても、予定放送時間よりも10倍の撮影量が必要といわれています。
しかし放送されるのは、収録したもののほんの一部。たとえば、1か月かけて収録をしたものでも、実際に放送されるのはほんの数分・・・ということも少なくありません。「あれだけ心血を注いだ番組なのに、たったこれだけ」と落胆することもあるでしょう。
そのためADを長く続けるためには、「テレビが好き」が大前提です。
逆に言えば、テレビが好きな方でないとADには向かないといえます。
あなたは、テレビが好きですか?
番組などを見て、「自分だったらこういう番組をつくりたい」とワクワクすることがあるのなら、テレビ制作に向いているはず。
きっと、アイデアマンの敏腕ADとしておもしろい番組を制作してくれることでしょう。
ADあるある
ADの仕事についてなんとなくイメージができたとしても、実際に働いているADからは「それだけじゃないよ!」という声が聞こえてきそうです。
ADについてより深く理解するために、「ADあるある」をご紹介します。
あるあるを元に仕事内容をイメージトレーニングすることもできますし、業務に必要なスキルを知るきっかけにもなるでしょう。
・指示が業界用語で行われる
・給与を受け取ってもなかなか使う暇がない
・収録によってはロケ弁が支給されるのでそれがとても楽しみ
・編集作業中の食事は出前が取れる
・番組のエンドロールに自分の名前が載る
・ゲストとの関係によっては名指しでテレビに映れる
・1日がとても早く過ぎる
・心血を注いだ番組が高視聴率を獲得すると感激する
まとめ
ADの仕事は膨大ですが、それだけやりがいも充分。
企画段階から関わり、編集作業もこなし、ようやく放映された番組に大きな反響があると、「大変だったけど今まで頑張ってきてよかったな」と報われた気持ちになることでしょう。
それは、「クセになる魅力」とも表現できます。ADとして刺激的な毎日を送り、他の職種では味わえない楽しさを見つけましょう。