役者になりたい、ドラマや映画に出演したい、そんな夢を叶えるためにはオーディションを受けて合格することが近道です。しかし「これといってアピールできる特技なんてないし、どうしよう」と悩んでしまう人はいるかもしれません。多くのオーディションでは、特技を披露する審査はめずらしくなく、履歴書に書く項目の一つにもなっています。特技がないと合格はできないものなのでしょうか。
ここでは特技の意味や必要性とあわせて、オーディションではどんな特技を披露すればいいのかを解説します。
そもそも特技とは何を指すのか?
特技は、オーディションの本番で披露するだけでなく、履歴書の段階で記入することが一般的になっています。
では、特技とはいったい何を指すのでしょう。何かの資格を持っていることが特技になるのでしょうか。役者志望の特技なら、「ふつうの人にはなかなかできないこと」「見た人が驚くようなスゴい技」など大げさなイメージを抱きがちです。
しかし、特技に資格は求められませんし、こうでなければならないといった決まりもありません。楽器やダンスなどを特技とする場合でも、レッスンを受けているかどうかは重要視されないことがほとんどです。
「特技」という言葉の強さにとらわれず、得意なことや長所など、もっと身近なハードルとして考えてよいでしょう。したがって、履歴書の特技欄には、資格がなくても自分が得意と思うことを特技として書けばよいのです。
ただし、得意なことをそのままストレートに書くことは賢明ではありません。例えば、「歌が得意です」と書くよりも「自分の歌声で人を笑顔にさせることができます」と書くことで、審査員の印象はぐっと変わってくるでしょう。
得意なことを、特別な「特技」としてアピールすることが記入のポイントとなります。オーディションの本番で披露する特技も、スゴいことをしなければ合格できないわけではありません。芋版を彫ったり、尻文字を描いたり、ユニークなことを披露して合格し、有名になっている女優もいます。
特技の披露は、自分の個性を見せること、審査員に強い印象を残すことがなによりも大事なのです。
オーディションで特技を披露する理由
オーディションで特技が求められるのは、それなりの理由があります。
審査員の目は、特技の内容よりもその特技をどうやって身につけたかに注視されます。そもそもオーディションは特技そのものを評価する場ではありません。スポーツにしろ芸術にしろ、ジャンルにかかわらず特技という目標に対してどのように努力してきたかが問われます。
なぜなら、特技としてアピールするだけの意気込みやそのプロセスこそが、今後も努力できる人物かどうかの判断となるからです。
また、特技は演技に通じる部分もあります。努力して習得した特技は、その人の演技の基盤になると見なされるでしょう。特技の内容やジャンルによっては、今後の芸能活動に活かせるものもあるため、売り出す方向性もしぼりやすくなります。
実際に楽器演奏やダンスなどの特技を生かして、ドラマや映画で活躍している有名人は少なくありません。オーディションで特技を披露する理由は、特技というフィルターを通してその人物を多面的に評価するためなのです。
芸能という分野は、華やかに見えても決してなまやさしい世界ではありません。きびしい環境の中でも前向きに努力し続けられる人物かどうか。オーディションでその評価を得るためには、どんな特技でも前向きに披露する姿勢が重要といえます。
どんな特技を披露するとウケがよいか
どんなに素晴らしい特技でも、オーディションでウケがよくなければ合格の望みは薄くなります。特技の内容にかかわらず、ウケをよくするためには何が必要なのでしょうか。
オーディションに来ているのは自分一人ではなく、何人もが同時に審査されることがほとんどです。そのため、他の人と特技の内容がかぶることも考えられます。
だれもが得意とする一般的な特技を披露する場合は、自分らしいひねりを加える必要があるでしょう。
例えば、多くの人が得意ジャンルとするダンスの場合、芸能のプロである審査員の目は肥えており、どこかで見たことのあるようなダンスだと印象に残りません。緩急をつけたキレ、間のとりかた、激しいモーションなど、自分なりにアレンジしたダンスなら見る側に意外なインパクトを与えるでしょう。
また、オーディションで好まれる特技は、一度見ただけで理解できる簡潔さです。複雑で時間がかかってしまうものより、短時間でわかりやすいものが印象に残ります。
わかりやすさでいえば、ものまねというジャンルがありますが、披露する場合はネタ選びに注意が必要です。
知名度の低い人のものまねでは共感を得られないばかりか、場がしらけることもあり、マイナスの印象を与えかねません。いずれにしても小声や小さな動きではなく、堂々とふるまうと好感を持たれやすくなります。披露する特技の中に「らしさ」を取り入れることが、ウケをよくするポイントといえるでしょう。
特技を披露するうえで注意したいこと
オーディションで特技を披露する際に、注意すべき点がいくつかあります。
まず、履歴書に記入する段階で、嘘を書くことは絶対に禁物です。
できない特技を書いたり誇張したりしないこと。嘘を書いてしまうと実際にオーディションで見せることができません。審査員の印象が悪くなるばかりか、できないことを書いたことで人間性も疑われるでしょう。
人物評価に重きを置くオーディションでは、これは大きなマイナスポイントになります。派手なものでなくても、自分のできる特技を正直に記入するようにしましょう。
次に、本番では規定の時間内で終わることが肝心です。
特技を始める準備に手間取ったり、時間が押してしまったりしないよう注意しましょう。時間がかかるとオーディションのスムーズな進行を妨げることにもなり、これもマイナス要因といえます。
また、専用の衣装や小物を使う場合、大がかりなセットや会場を汚してしまうものは持ち込まないことです。どうしても必要な場合は、規定の時間も併せて事前に主催者に確認しておくようにしましょう。
特技がないと合格はできない?
では、特技がないと合格はできないのでしょうか。
結論からいうと、決してそんなことはありません。もちろん特技はあるに越したことはありませんが、それが合否を大きく左右するものではないということです。特技を披露できなかった人でもオーディションに合格し、役者やモデルとして活躍している人は見受けられます。
合否で重要なポイントは、審査する側が求める人物像の資質を持っているかどうかということです。特技の悩みを抱えたまま、肝心な演技力が発揮できず、せっかくのチャンスを逃してしまっては本末転倒といえるでしょう。
オーディションの目的は、特技を披露することではなく、自分の個性や魅力を見てもらうことです。
特技のことをあれこれ考えるより、まずは演技力をしっかり身につけ、自信を持ってオーディションに挑むべきです。特技がなくても合格できる可能性があるなら、ネガティブな気持ちになる必要はありません。なりたい自分の未来を思い描きながら、前向きに、自分の力を出し切りましょう。
オーディションの目的を見失わないこと
オーディションにおいて優先すべきは、自分の個性や自分らしさをアピールすることです。特技を披露することは、あくまでその人を評価するための手段の一つにすぎません。
大切なのはオーディション本来の目的を見失わないこと。
そのためには、プロに師事して個性が生きる演技力を身につけることが賢明といえます。自分の個性とは何か、長所はどこか、それをどうアピールするかを意識することが合格への第一歩です。その歩みを着実に前へ進めるためにも、芸能界に精通した芸能スクールでレッスンを受けることが得策といえるでしょう。