あがり症とは?
人前に出てパフォーマンスをする、たくさんの人の前で意見を述べるなどの状況では多くの人が少なからず緊張するのではないでしょうか。あがり症とは緊張をもたらすようなシチュエーションで心身に様々な症状が表れることです。たくさんの人に注目されるような場面で胸がドキドキしたり、大量の汗をかく、上手く話せないなどの症状はあがり症ではなくても経験したことがある人はたくさんいると思います。
他にも、顔が真っ赤になる、手足が震える、息苦しくなる、吐き気がする、お腹が痛くなる、夜眠れなくなるなどの症状が現れる場合もあります。このような症状が現れると周りの人にも緊張していることが伝わり、よけいに注目されてしまうので本人はさらに辛い状況になることもあります。あがり症の症状が強く出る人は、緊張した状態で上手く話せない、声が震える、お腹が痛くなる、めまいがするなどの症状に悩まされ本来やるべきパフォーマンスをスムーズに進行できない状態になってしまいます。
人間はある程度の緊張であれば自分で心や体をコントロールすることができて、日常生活に支障をきたすレベルになることはほとんどありません。しかし、あがり症の症状が強い人にとっては緊張する気持ちをコントロールすることが難しく学校や会社など人が集まる場所で困ることも度々あるでしょう。
人前であがってしまう理由は?
では、なぜあがり症の症状が出てしまうのでしょうか。
人前であがってしまう原因について知っておきましょう。
緊張したり、あがったりする状況は人によって違います。学校や会社などの場所で、大勢の前で発表するのが苦手な人もいればマンツーマンで話したり電話で話すことが苦手な人もいます。このような緊張する場面では「失敗したらどうしよう」「変だと思われたらどうしよう」という心配から心の中の不安や恐怖というネガティブな気持ちが強くなり混乱した状態になります。
すると、その感情を察知した体は交感神経を刺激するノルアドレナリンを分泌して自律神経のバランスを乱してしまいます。そのため、緊張する場面で身体の異変が起こりますがその反応が大きい人はあがり症だと言えるでしょう。
「あがらないようにしよう」と気持ちを落ち着かせることを意識しすぎるとさらにコントロールがきかなくなり緊張を高めてしまう場合も多いです。自分はあがり症だと自覚している人の中には、改善したいけれど性格だから仕方ないと諦めている人も多いという話も良く耳にします。自分はどの程度のあがり症で、治療や改善策があるのかどうかも分からないという人も多いのではないでしょうか。
あがり症のセルフチェック方法
あがり症の症状は、赤面、震え、腹痛など多くの人が似たような症状を訴える場合が多いです。
しかし、中にはしゃっくりが止まらなくなる、涙が出てしまうなど一般的なあがり症の症状には当てはまらないような心身の変化が起こる人もいます。そこで自分はあがり症に当てはまるのかをセルフチェックしてみましょう。
● 宴会やパーティーなど多くの人と会話を楽しむ場が苦手
● 大人数の中から指名されるのが怖い
● 人前での自己紹介が苦手
● プレゼンなど発表する時には練習の時のようにスムーズに話せない
● 人と電話で話すときに緊張する
● 会話する相手の目を見て話すのが苦手
● 緊張すると手足、声が震える
● 緊張すると赤面したり、お腹が痛くなるなどの体に変化が起こる
● 失敗をすることが怖い
● 人前で話すときに早口になる、どもる
上記のチェック項目に当てはまるものが多ければあがり症を克服するための対策を考えてみた方がいいでしょう。普段からネガティブに物事を考えるタイプの人や、かしこまった場所でなくても人と話している時は常に緊張した状態で楽しめないというような症状も単なる性格ではなく改善する方法がある場合も多いです。
適切なトレーニングや治療を受けることで、このような辛い経験を減らすことができるかもしれません。「人見知りだから」「たくさんの人の中に入るのは苦手だから」と人前に出ることを避けるようになっては、さらにあがり症の症状を悪化させてしまうことにもなりかねません。
あがり症の人の性格は?
あがり症の症状が強く出る人の共通点として、物事に対する緊張や不安が強い性格であることが分かっています。心配症で先のことを考えすぎる人が多く、失敗した時に気にしすぎてしまう性格でもあるでしょう。また、失敗した自分を受け入れることも苦手であらゆることに言い訳をしてしまう人も多いでしょう。
あがり症の人のは周りの人の反応を気にしすぎる、顔色をうかがう性格の人も多いようです。人からどう思われているのかを意識しすぎて過剰に緊張してしまいます。
また、責任感の強い性格も期待に応えようというプレッシャーを感じることで緊張しやすくなります。
このように先のことを考えすぎる、人の視線が気になるというあがり症の人に多い性格は精神的な訓練やトレーニングを受けることで改善される場合もあります。物心がついたころにはこういった性格に当てはまり、周りの人からも「人見知り」「内向的」などと言われた経験がある人は自分が上がり症だと自覚している人が多いのではないでしょうか。
テレビに出ている芸能人が「人見知りが激しく、昔は人前に出るのが苦手だった」などと話しているのを聞いて「そんなわけがない」と思ったことはありませんか?
しかし、実際に人前が苦手であがり症だった人が、人前に出る仕事について克服したという話は珍しくありません。あがり症の症状は、慣れや経験を重ねることで軽減されることも多いのです。
受診が必要なあがり症とは?
あがり症の場合、例えば学校で毎週同じクラスメイトの前で同じような発表をする機会があれば回数を重ねるたびに緊張は和らぎ、初めての発表の時に比べて症状は治まる傾向にあるでしょう。しかし、このような慣れた環境でも赤面したり手足が震えるなどの症状が治まらない人は社会不安障害という精神疾患の可能性があります。
社会不安障害は社会的状況において恐怖を感じる精神疾患で対人恐怖症や赤面症などもこの疾患が原因で起こっていることも考えられます。社会不安障害の可能性がある場合は、心療内科などを受診することをおすすめします。問診や社会不安障害の尺度を検査し、遺伝的要因なども参考に診断されます。
社会不安障害と診断された場合は薬物療法での治療や、実際に行動しながら適応する力をつけていく認知行動療法などで治療が進められます。単なるあがり症で性格的なものなので症状と付き合っていくしかないと思っている人も多いようですが、実は社会不安障害であることも考えられます。
人前で何らかのパフォーマンスをしなければいけない時に緊張するのは誰にでもあることです。しかし、人と会話をする時、電話をする時などの日常の場面でも緊張して上手く話せなくなったり、目を合わせられないなどの症状があれば社会不安障害の可能性も視野に入れて受診することを考えましょう。あがり症の場合も、克服するためのトレーニングがあります。改善するために一歩踏み出す勇気が大切なのではないでしょうか。