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声優を目指すなら知っておきたい!意外と知られていない声優の歴史

2019.07.04 / 声優

声優を目指すなら知っておきたい!意外と知られていない声優の歴史

声優の歴史は、1941年にNHK(当時の「東京放送局」)が「NHK放送劇団」を設立したことからはじまったといわれています。テレビ放送が本格的にスタートしたのが1953年ですから、まだラジオ放送しか行われていない時代です。ニュースや天気予報、学習講座や落語などのさまざまな番組がラジオで放送されており、その一つに「ラジオドラマ」もありました。ラジオドラマは、音声のみで物語が展開されていくドラマ番組です。セリフに効果音を交えた演出が好評で、たいへん人気の高いものでした。当時のラジオは有料放送だったにも関わらず、多くの人が関心をもって聞いていたといいます。

そんな中、NHKが自局のラジオドラマの出演者を養成するために立ち上げたのがNHK放送劇団です。そして、この劇団が輩出した第1期の俳優たちを「声優」と報じたのが、一般的には声優のはじまりとされています。「声優」という言葉そのものは、NHK放送劇団ができるより前からありました。その歴史は、戦前の1925年にまでさかのぼります。この年に、「大地は微笑む」というサイレント映画が上映されたのですが、この映画をNHKがラジオ番組として放送することになりました。

音声の入っていない映画をラジオ番組にするため、俳優が声を担当する「セリフ劇」として制作されました。このできごとが、「声の出演」という仕事の誕生だったといわれています。また、1926年には「声優」という言葉が新聞で使われていた記録も残っています。

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声優の第一人者は誰?

1992年から日本テレビ系列で放送が続いている「ぶらり途中下車の旅」という旅番組は、ご存じの方も多いかもしれません。日本で最初に「声優」を職業とした人物だといわれているのが、この番組の初代ナレーターを務めた滝口順平さんです。その独特な声とナレーションは、たいへん印象深いものでした。滝口さんは、ナレーション以外にもアニメや人形劇、映画の吹き替えやコマーシャル、ゲームなど数多くの作品に出演しています。

まだ、テレビ放送がスタートして間もないころから、滝口さんはプロの声優として活躍しています。初期のテレビ番組といえば、野球やプロレスなどのスポーツ中継が主な内容でした。しかし、テレビが家庭に普及するとともに放送時間が拡大してくると、次第に番組不足が問題になってきました。その穴を埋めるために、海外のドラマ番組が「吹き替え」で放送されるようになります。

1956年に放送された「カウボーイGメン」もその一つで、登場するすべての役柄をたった1人で演じきったのが滝口さんでした。まだ、収録の技術が実用化されておらず、テレビ番組はすべて生放送だった時代のできごとです。なお、事前に収録した音声が本格的にテレビ放送で使われるようになったのは、1958年ごろのこと。編集技術が未発達であったため、この当時のアフレコは番組1本を通しで行っていました。

出演者の誰かがセリフを間違えたり言いよどんだりすると、そのたびに最初からやり直しになってしまったそうです。声優の仕事は、ミスが許されない大変な緊張感の中で行わなければならないものだったのです。

声優が職業として認められるきっかになったのは「鉄腕アトム」

声優は、今では人気の高い職業の一つに数えられています。しかし、もともと声優という仕事は、俳優の下積みのようなものとみなされていた時代がありました。まだ役者として食べていくことが難しい新人俳優が、アルバイトとして声優の仕事を引き受けていたのです。そのため、その当時の声優は「俳優よりも格が低い職業」というイメージでした。現在のように声優が俳優とは別の職業としてみられるようになったことには、アニメーションの普及が関係しています。

1963年、手塚治虫率いる「虫プロダクション」の「鉄腕アトム」がテレビで放送開始されます。1話あたり30分の枠で放送される本格的な連続テレビアニメーションは、この作品が日本で最初のものでした。今でこそ日本が誇るアニメ文化の金字塔ともいえる作品ですが、当時はアニメなどにお金を出してくれるスポンサーはいなかったといいます。そのため、アニメ化を実現するために制作費を安くして、「とにかく作らせてくれ」と関係者にかけあったそうです。こうして世に送り出されたロボット少年「アトム」が悪者たちを倒していく姿は、日本中の子どもたちを熱狂させることとなりました。

鉄腕アトムの大きな成功をきっかけとして、それから新しいアニメ作品が次々に制作されるようになります。漫画をアニメ化したものだけでなく、アニメがオリジナルストーリーのものもありました。そして、テレビアニメが普及するにつれて声優という仕事にもだんだん注目が集まるようになっていきました。俳優のアルバイトなどではなく、確立された一つの職業として声優が認められるようになったのです。

進む声優のタレント化

職業として声優を目指す人は、年々増えています。その一方で、少子化の影響などもあり、アニメ番組の数は少しずつ減ってきているのが現状です。さらに、視聴者のライフスタイルの変化にともない、地上波でのテレビ視聴そのものも減りつつあります。C少ない仕事を大勢で取り合わなければならないことから、声優は競争の激しい職業になりました。アニメの声優の仕事環境も、これまで以上に厳しいものになってきています。なぜなら、放送期間がはじめから1クール単位で計画され、早ければ3カ月(12話)で終わるスタイルが主流になったためです。

以前は、1年以上放送が続くアニメが多かったことを考えると、レギュラーの仕事1本あたりの期間がかなり短くなっています。せっかくオーディションを受けて合格しても、1つの役柄を演じていられる期間はすぐに終わってしまうのです。そのため、レギュラーの仕事をこなしながら、次の仕事を獲得するためにオーディションを受けなければならないことも珍しくありません。

声による演技という本来の仕事だけで食べていくことが簡単ではなくなるにつれて、声優のタレント化が進んでいます。声優を抱える事務所としても、よりタレント性のある売り出し方をするのが当たり前になってきました。例えば、演技力を活かして舞台俳優としても活動したり、歌唱力の高い人なら歌手としてデビューしたりといったことです。トークのセンスに優れた人なら、トークショーやバラエティ番組なども活動の場になります。

容姿が整っている人や性格の明るい人なら、アイドル声優として人気を得ることもあります。いずれにしても、声優以外の部分で何か人に勝るところのある人が、声優としての本来の仕事を続けるうえでも有利だといえるでしょう。

息の長い声優を目指すためにはレッスンを受けよう!

声優は、アニメやナレーション、映画の吹き替えなどといった声による演技をするのが本来の仕事です。しかし、声優志望者が増え続け競争が激しくなった声優の世界では、それ以外の能力もあわせ持った人がより活躍しています。声優という仕事に、マルチな才能が求められる時代になったといえるでしょう。長く活躍できる声優を目指すなら、さまざまな経験や練習を通して、本来の声の仕事以外にも自分の得意ジャンルを持つことが大切です。それには、歌やダンスなどのレッスンを受けて、幅広い実力を身につけていきましょう。

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